• パック入りの卵の頭やわらかき尖りをもちてこの世に並ぶ
• 下総の地の凹凸をまんべんなく潰して夏至のふかき黄昏
• 縦よりも横にひろがる勢いを視野の限りの沖と呼ぶべし

　私たちの日常は、非日常を含みながら豊かにある。それは、発見の喜びでもある。卵の頭がもつやわらかな尖り。地の凹凸をまんべんなく潰す黄昏。縦よりも横にひろがる沖というもの。発見は、世界と身体との共鳴。

• 飛行機が滑走路につくその足のように摩擦す　頭痛はじまる
• いつまでも背にある夕日五十代は峰打ち受けし鈍痛をもつ

　いま・ここにある私の身体。長い時間を過ごしてきた年代としての身体。身体は痛みもつ。痛みは、身体の感度を保証する。人は、痛みがあるから、もの／ことを感受することができるのだ。

• 坂の上に桜揺れおりうっすらと眠りが坂よりおりてくるなり
• ぎんいろの自動改札とおりぬけ今日の真ん中へ放り出されし
• ペットボトル片手に歩く広島の日盛り水をとめどなく飲む

　身体は、世界と共鳴しながら、ときにその位置を入れ替える。それは、発見の向こうにある大きな喜び。そのときに立ち会ってくれる大きな大きな器。つまりそれが、短歌なのだと思う。