• ラジオより天皇陛下の声聞こゆどうやら戦争がおわったらしい

　この一首を巻頭に置く一冊は、浜田さんの歴史である。三章から構成されており、�Tはこれまで過ごした土地を巡って制作した作品、�Uは現在の生活の拠点・宮崎での作品、�Vは�Tに先立ち、「啄木来釧百年」の折に訪れた生まれ故郷・釧路の作品となっている。

• この川の下流おおよそ十キロの鉄橋を夜ごと汽車通る音
• 「蛍の光」流れ終りて一斉に灯り消えたり洲本遊郭
• 台風が明日来る前の今日の晴れ稲刈る人ら多く出ている
• 大いなる目玉にわれは見入られてわれも見返すその牛の顔
• この町に生れしわれが思い出の何も無ければまず観光す
• 深々と寒さはあれど深々と雪降ることの少なき釧路

　各章から二首ずつ引いた。少ない引用では全体像を?むことができず残念であるが、とても魅力的な一冊である。�Tでは（詩の）輪郭を記述し、�Uでは（詩の）核を記述し、�Vでは来訪者としてまちを記述しているのだと思う。浜田さんが短歌をとても愛していることがわかる、そんな一冊でもある。